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Révision Du Livre

平和を愛する男がチョイスするブックガイド

夜は短し歩けよ乙女

日本文学 森見登美彦

京都にある国立大学の、とあるサークルに入って来た「黒髪の乙女」に一目ぼれした「先輩」。 「先輩」は彼女といい仲になろうと画策するが、なかなかうまくいかない。 「乙女」はそんな先輩の気持ちを知ってかしらずか、顔をあわせるたびに「奇遇ですねえ」というばかり。 だが、二人にお互いの気持ちを確かめ合う機会が巡ってくる。 果たして、二人の運命やいかに… 気位が高く、あれこれ御託を並べ立てる割に行動力と度胸が伴わない「先輩」。 自分が周囲から浮いていると気がつかず、天然で「KY」なところがある「黒髪の乙女」。 経営している鯉の養殖業がうまくいかず、借金取りの影に怯えている藤堂という男。 周りからある種尊敬と畏怖の念を持たれている「李白」と呼ばれる謎の高利貸し。 古書店街を徘徊し、なぜか「先輩」や「黒髪の乙女」にまとわりつく謎の少年。 彼らのほかにも、正体不明なキャラクターを持つ登場人物が巻き起こす、奇想天外かつ荒唐無稽な物語は一言では言い表せないものがある。

この本で展開される事件は、多額の借金をかけて、アルコール度の高いカクテル「偽電気ブラン」の飲み比べだったり、学園祭で行われる移動演劇「偏屈王」をめぐる、劇団と学園祭を取り仕切る事務局との攻防戦における駆け引きだったりするのだが、学園祭での出会いにかすかな可能性を賭ける「先輩」のけなげさと、自分のとっている行動が周囲の注目を浴びているという自覚がない「乙女」の、時と共にうつろう心理描写はまだ理解できるし、(それでも「理解に苦しむ」と思う読者も多かろう)本当かどうかわからない「お宝」を賭けての激烈かつバカバカしい我慢大会の様子は笑えるかもしれない。 しかし、たまたま居合わせた飲み屋でセクハラ行為をされた藤堂のために、彼の借金を賭けて「李白」と飲み比べをするのは、どう贔屓目に見ても理解できない。もっと理解できないのは、冬の京都を襲ったたちの悪い風邪の原因が「李白の引いた風邪」であり、その風邪を治すために「乙女」が薬を「李白」の住む糺ノ森まで届け、その薬を「李白」が飲んだとたんに風邪がぴたりと治まるという展開にいたっては、まっとうな感覚を持つ人間にはとても理解できないに違いない。 この本は本屋大賞2位に選ばれた「傑作」だそうだが、凡人が読めば読むほど理解不能になってしまう「怪作」である。頭のいい人にとっては、この本の良さは理解できるかもしれないが、あいにくと私は、そこまでの知性がないので、最後までこの本の良さを理解できなかったのは残念である。