Révision Du Livre

平和を愛する男がチョイスするブックガイド

2014年6月の読書リスト

今月も7月、今年も半年が過ぎたと言うことだ。 早いなあ。というか、早すぎる。しかも、今日で7月が終わってしまうではないか!今年も、こんな調子で過ぎてしまうのかと思うと、ちょっと憂鬱である。 1980年代に一世を風靡したイギリスのバンド・Duran Duranのリーダーはかつて 「1日が48時間だったらいいのに。24時間だったら、やりたいことが満足に出来ない」 とインタビューで嘆いたが、それから約30年、彼がそういった気持ちがやっとわかったような気がする。 話は変わるが、とうとう安倍内閣は「解釈改憲」という、掟破りの閣議決定を行った。 彼らは、憲法が何のためにあるのかを全く理解していない。憲法が枷を嵌めるのは「国民」ではなく「権力者」なのだ。 「私が最高権力者だ!!」 と国会で答弁した安倍晋三は、自分のことを「全知全能の神」だとでも思っているのだろうか?安倍の天敵というべき夕刊紙「日刊ゲンダイ」は、再三にわたり彼をヒトラーにダブらせているが、今の安倍はヒトラーの再来ではないか?というより、今の日本の世相が、70数年前の日本そっくりである。本当に不気味だ。

さて、6月読んだ本の紹介。 読了冊数は少ないが、これは先月マンガを沢山読んだからだ。

2014年6月の読書メーター

読んだ本の数:3冊 読んだページ数:862ページ ナイス数:2ナイス

シドニアの騎士(3) (アフタヌーンKC)シドニアの騎士(3) (アフタヌーンKC) 読了日:6月4日 著者:弐瓶勉
問題解決――あらゆる課題を突破する ビジネスパーソン必須の仕事術問題解決――あらゆる課題を突破する ビジネスパーソン必須の仕事術 読了日:6月13日 著者:高田貴久,岩澤智之
創作の極意と掟創作の極意と掟 読了日:6月26日 著者:筒井康隆
読書メーター

1.シドニアの騎士(3)

先月までTBSで放映されていた、同名アニメの原作である。 アニメでの大きな違いは、天敵・奇居子(ガウナ)に捕食されて死んだ星白閑(ほしじろ・しずか)の胞衣(エナ)を見た、岐神海苔夫(くなと・のりお)の反応。アニメ版での岐神は、戦闘中でしかも自分は班長であるにもかかわらずエナ星白をみてフリーズし、部隊の指揮を放棄してしまう。これがきっかけになって彼は操縦士を辞めてしまうのだが、原作版ではその描写はない。 星白の死は、明らかに岐神のとった行動に原因がある。自分が乗りたがった戦闘機が、主人公・谷風長道(たにかぜ・ながて)のものになると知った岐神は、谷風に嘘の情報を伝えて、彼を殺そうとした。星白は、谷風の苦境を救おうとしてガウナの犠牲になり、その出来事は、谷風の心に深い傷を残すことになった。だが岐神はそのことで彼を問い詰めようとした谷風に 「俺を糾弾するな」 と開き直る。 アニメ版では、星白の死が自分の行動に原因があることを彼は自覚しているようで、エナ星白を見た岐神は 「星白が、あの世から自分を殺しにやってきた!」と思ってとパニックに陥り、錯乱したあげく任務も放棄するという醜態をさらした。そのために、部隊としての任務は谷風・仄姉妹が中心となって作戦を遂行することになった。このシーンは外国人の日本アニメフリークでも話題になり、当然のことながら彼らは、岐神をこれでもかとばかりに叩いていた。これが実践だったら、彼は軍法会議で重罪を課されるのだが、残念ながら原作でもアニメでも、そのような展開にはならない。 当冊後半では、長道の誕生の秘密が明らかになる。シドニアの内部も、いろいろとドロドロとしたものがあるようだ。これらのことはネタバレになるから詳しくは触れないが、長道の性格を知る上では、興味深いエピソードである。

2.問題解決―あらゆる課題を突破する ビジネスパーソン必須の仕事術

NGO活動に関わっていると、どうしても「組織運営」や「問題解決」について関心を持つようになる。我々が所属している組織の現状はこうで、どんな問題を抱えており、その問題を解決するためにはどうしたらいいか?ということを、絶えず考えざるを得ないのだ。 書店のビジネス本コーナーに足を運ぶと、組織運営のための本がありとあらゆるところに、うずたかく積まれている。ところがそれらの多くは、著者の体験に頼ったことばかりで、理論的な蓄積に基づく書物がないことに不満を感じていた。この本は、理論的なアプローチで「組織の問題を解決する」コンセプトで書かれた本である。 読んでいて理屈っぽさを感じるかもしれないのは、著者二人の専攻が理系出身である事が大きい(ただし高田貴久氏は東大Ⅰ類中退→京都大学法学部卒業という経歴)。彼らは長らく企業業務コンサル業務に関わり、人事制度・企業風土改善等の分野で実績を残してきた。本書は企業・組織内において「問題の見つけ方」「問題の切り分け方」「対策の実行」「検討」等について、懇切丁寧に解説してくれる。それらの多くはこれまで知らなかった見方が多く含まれており、TOYOTAソニー三菱商事など社員研修の教科書として採用されているのも納得である。もっとも、この本で新たな知見を得たところで、社員にその気や能力がなかったら意味がないのは当然のことなのだが。

3.創作の極意と掟

タイトルだけで判断すると「作品を書く上での注意事を集めた書籍」と思う向きもいるかもしれないが、実際は筒井康隆が、これまでの著作で得た知見や文壇の裏話、古今東西の名作についての知見を記した、評論というかエッセーに近いものである。当ブログでも紹介した「小説講座 売れる作家の全技術 」とはまた違うもので、著者も本書の中で「これは単なるエッセーだ」といっている。 「序言」を含めて、本書は全31テーマで構成されているが、一読して思ったのは、著者は膨大な量の小説を読破しているんだな、ということ。「売れる作家」でも大沢在昌は 「自分は高校までに1,000冊を読破した」 と語っているが、筒井はこれだけの大家になるまで、どのくらいの書籍を漁ったのだろうかと思うと、なんだか空恐ろしくなってくる。裏を返せば、これだけの大家になるためには、古今東西の名作を読破する必要がある。つまり、高校の日本史・世界史の歴史に出てくる「名作」といわれる作品を読破するのは必要最低条件であり、さらに文学史上に多大な影響を与えた作品についての詳細を把握する必要がある、ということである。 今まで意識していなかった項目が並び、その文例をあげて開設しているという点では、異色のHow To本というべきだろう。ただしこの手の本は、一度通読しただけで理解することはなかなか難しい。「ああそうか」と思えるまで、何度も繰り返して読み込まないと、理解するのは難しいのではないかと思う。作家を目指す人はもちろん、本を読み解きたいと思っている人は是非読んで損はないと思う。同時に、筒井康隆の文学館がいろんなところで垣間見えて、興味深い一冊になっている。