Révision Du Livre

平和を愛する男がチョイスするブックガイド

2014年7月の読書リスト

あっという間に8月だよ~。 6月から7月にかけて、日本国内はブラジル・W杯の話題で大騒ぎ(といっても、日本代表が予選リーグ敗退が決まったとたん、メディアの扱いは一気に萎んでしまったけど)だと思ったら、今度は「夏の甲子園予選」ときたもんだ。そもそも「夏の甲子園」だなんて、夏枯れでネタに困った朝日新聞が設立したイベントだというのは、関係者の間で常識なのにね。 夏の甲子園球場の体感温度は、下手をすれば40度を突破すると言われているのに、こんな厳しい条件で高校生にスポーツをやらせるとどんな悪影響があるのか、誰か研究してくれませんか?まあ誰かが研究して結果を発表しようとしても、あちこちから圧力がかかったり、数値をねじ曲げられるのがオチなんでしょうが。スポーツマスコミは 「スポーツに科学的理論を導入しろ!」 と言いながら、灼熱の甲子園というムチャクチャな条件で、郷土愛・母校・教師への忠誠と、仲間、同級生の思いを一方的に背負わされる当事者の気持ちを考えたことがあるだろうか?そんな背景を知らず(イヤ、知っていても) 「かっせ、かっせ、○○(これにも違和感。どうして「かっ飛ばせ!」とコールしないのか?)!」 だの 「XX君ファイト-!」 とスタンドで叫ぶ人たちの頭の中身を、一度でいいからのぞいてみたい。高校野球についてはいろいろ書きたいが、それはまたの機会に。 というわけで、先月読んだ本の感想を。

2014年7月の読書メーター

読んだ本の数:6冊 読んだページ数:1336ページ ナイス数:0ナイス

魔法科高校の劣等生 (13) スティープルチェース編 (電撃文庫)魔法科高校の劣等生 (13) スティープルチェース編 (電撃文庫) 読了日:7月13日 著者:佐島勤
オール讀物増刊号 エロスの記憶 2014年 06月号 [雑誌]オール讀物増刊号 エロスの記憶 2014年 06月号 [雑誌] 読了日:7月13日 著者:
COPPELION(21) (ヤンマガKCスペシャル)COPPELION(21) (ヤンマガKCスペシャル) 読了日:7月15日 著者:井上智徳
僕たちはドクターじゃない Karte2 (メディアワークス文庫)僕たちはドクターじゃない Karte2 (メディアワークス文庫) 読了日:7月25日 著者:京本喬介
憲法がわかる。 (アエラムック (59))憲法がわかる。 (アエラムック (59)) 読了日:7月28日 著者:
私は金正日の「踊り子」だった〈下〉私は金正日の「踊り子」だった〈下〉 読了日:7月31日 著者:申英姫
読書メーター

魔法科高校の劣等生 (13) スティープルチェース

第1巻発刊以来、カルト的な熱狂信者と、それと同じくらい、いやそれ以上に否定的な読者が、ネット上で激烈な論戦を闘わせているライトノベル・シリーズの最新刊。今年4月から放映されているアニメ(2クール放送予定)も人気が伸び悩み、担当声優からも 「独特な性格の作品(まさか、自分が出ている作品を、口が裂けても「最低な作品」といえないだろう)」 とバカにされ、ラノベ愛好家からも「この作品のおかげでラノベの評判が落ちる」と罵倒されつつも、既刊巻数が2桁を超えたと言うことは、ファンが言うところの「売れれば何でもあり」を地でいく作品と言えなくもない。 独特の世界観と難解な用語、詳細な(これですら、アンチからは「細かく詰めてみれば、これ以上あり得ないくらいガバガバ」と非難されている)設定に加え、会話文ですら改行連発という、まことに読みにくい「独特」の文体故に、第1巻では読者から 「同人誌ならまだしも、商業作品ではあり得ない文体と世界観」 「私が見たいのは『物語』であって『説明』ではない」 とさんざんな言われようである。 私自身も第1巻を通読してみて 『なにこの文体?『小説』ではなくて『電化製品のマニュアル本』を読んでいるみたいだ」 という感想を持った。基本的に学園物は大好きだが、これはちょっとついていけるのかな?と思ってしまった。 さて、そんな第1巻刊行から3年近くともなると、さすがに著者の文体にも多少の変化が認められる。第1巻のような説明臭さが少しは和らぎ、会話文内の執拗な改行も消えた他、細かいところもだいぶ改善され読みやすくなっている。 とはいえ、基本的には何かあると、妹が「さすがお兄様!」と褒め称えるという物語なので、そういう展開が苦手、嫌いな人にはお勧めできない。日本アニメ好きの外国人も、この作品を嫌っている人が多いらしく、物語は全体の2/3を経過したというのに、第5話以降の感想が紹介されていないのは、いかにこの作品が異常であるかの表れと思われる。 舞台は主人公が魔法科高校に入って2年目の「九校戦」だが、2冊を費やして綴られた1年生の時の「九校戦」とは異なり、当巻では「l九校戦」の影で展開される十氏族の陰謀を「お兄様」がどうやって阻止するかに重きが置かれている。だから、二年目の「九校戦」の模様を期待していると肩すかしを食う。作者は後書きで「今年の九校戦の模様は、別に改めて書きます」と書いているが、新しいシリーズを始めたこともあり、いつ書店に並ぶかは未定。この人、サラリーマンをしながら作家をしている「兼業作家」だからね。ファンは、首を長くしてお待ちを。

オール讀物増刊号 エロスの記憶

発刊元が、あのお堅い出版社「文藝春秋社」の「オール讀物」が「エロス」をテーマにした出版物を出したというので、思わずジャケ買いしてしまった。だがタイトルに「エロス」とついているが、中身は全然エロくない。なので、夕刊紙やスポーツ新聞に掲載されている「ポルノ小説」を収録した別冊だと考えている人には、物足りなく感じるだろう。ポルノ小説で言うところの「エロス」を感じさせる作品は、山田風太郎の作品だが、それですら、ポルノ小説でお約束の「愛撫」「まxこ」「お○ん○ん」「激しく突いて」といった、この手の作品ではお約束になっている性描写は皆無。おそらくそういう描写は、読者が行間から読み取れ、ということのようだ。 私が一番気に入ったのは、池田満寿夫(故人)が、佐藤陽子に送ったラブレターの数々。こんなに激烈な言葉で綴られた手紙を送られれば、どんな女性だっていちころだろう。この手紙が書かれた時代は、ケータイはもちろんネットも電子メールも存在せず、海を隔てて暮らす恋人同士を繋ぐ手段は、手紙と電話だけだった。男は、一人の女を必死に口説き、愛し、そして生活のために闘った。「現代では、とても考えられないやりとりの数々。今男が、これだけ執拗に手紙を送ったら「ストーカー」にされるだろう。もう一度満寿夫に会いたい!」と叫ぶ、佐藤陽子の手記がなんだか切ない。

COPPELION(21)

3月刊行予定が遅れに遅れ、3ヶ月延期されてようやく刊行されたシリーズ最新刊。扱っているテーマがテーマだけに、ありとあらゆるメディアから黙殺されまくっているが、テーマが「原発」だだからそれもしょうがない?イヤイヤイヤイヤ冗談じゃない、この作品には、現世に対する皮肉と風刺が一杯詰まっている。だがアニメ化に当たり、年代と場所が変更になり、テーマの一つである「放射能汚染」から最初の3文字が削られ、「メルトダウン」に至っては、単なる「事故」にさせられる不憫な作品。これが海外の作品だったら、情け容赦なく政府・電力業界を叩きまくるだろう。 19巻で黒焦げになったはずの黒沢遙人が、1日以上を費やして復活したり、その遙人が「忘れ物係」の襲撃で生死の境を彷徨う成瀬荊に、自分の命を分け与えて彼女の命を救うという、一部で言われるところの「ご都合主義的な展開」はともかく、荊・遙人達コッペリオン達と「忘れ物係」の対決は、いよいよ物語は終盤へと近づいていることを暗示させる。そして明かされる伊丹刹那の正体。彼女は人間か?それともクローンか?

僕たちはドクターじゃない Karte2

主人公たち特別医学生「クロイツ」メンバーの活躍を描いたシリーズ第二弾。個人的にはこのシリーズが好きだったのだが、残念ながらこのシリーズは当巻をもって終了とのこと。彼らの活躍ぶりをもっと見たから少々残念だが、少しでも患者の気持ちにより添いたいと思う気持ちは、リアル医学生と少しも変わらないだろう。 第1巻ではドクと紅のやりとりが中心だが、本巻では京弥と真琴のやりとりや、彼らの本来の性格にも焦点が当たる。その変態ぶりが強調される京弥だが、本当の姿は、その変態的趣味に由来するとはいえ、自分より小さいものを守ることについてことについては、ドク達以上のものがあるし、その京弥に対し事ある毎に暴力を振るう真琴も、優秀な外科医であり、後半では患者に恋するという、乙女の一面も見せてくれる。第1巻では薬物中毒、第2巻では誤診問題や、その道の権威にすがることの危険性など、現代医学界に絶えずついて回る問題について、ワカモノ視点でわかりやすく伝えてくれただけに、シリーズ終了は何とも残念である。

憲法がわかる(AERAムックシリーズ)

大学生向けに発行され、一世を風靡した「AERAムックシリーズ」の後期に発行されたものである。 この本をもう一度読んでみようと思ったのは、安倍内閣が打ち出した「憲法96条改正」及び、集団的自衛権実施のための「解釈改憲」について、憲法は一体どういう観点で成り立っているのだろうか?ということを知りたかったからだ。結論から言えば、この本は「憲法とはなんぞや?」と言うことを知りたい人には不向きの本である。しかしながら「国家と憲法」について深く知りたい、あるいは「ジェンダー」「環境保護」などの論点について、憲法は何が出来るのか、解釈の可能性について知りたいと思っている人には、極めて有用な書籍となり得るだろう。巻末には日本国憲法条文の他、国連憲章、世界人権宣言、国際人権規約A、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約、ポツダム宣言日米安保条約(1960年改定)全文が掲載されているのはありがたい。紹介されている書籍については、かなり専門的なものが多数なので注意が必要だ。

私は金正日の「踊り子」だった〈下〉

1990年代後半に「脱北」した、万寿台芸術団に在籍していた元「踊り子」が、それまでの半生を綴った本の後編である。 結婚して家庭を持ち、2人の子どもに恵まれた筆者。夫の仕事は金融ディーラーであり、その儲けは人民のためではなく、金正日一族の豪奢(ごうしゃ)な生活のために使われていると知った彼女は、彼らのやり方に疑念を持つようになる。その一方で、庶民層のためのインフラ整備はおざなりにされる。さらっと紹介される、北朝鮮での「家族計画」の実態。さらに、筆者の渡英を認めるのと引き替えに夫婦に党上層部からつきられた、この上なく冷酷な条件とは?積もり積もった不満に加え、夫が抱いた上層部への不信感をきっかけに、夫婦はついに脱北を決意する。厳しい条件をかいくぐって亡命に成功した一家だが、夫と筆者の家族は、今どこで何をしているのだろうか?一番気がかりなのはそこだ。どうか生き抜いて欲しいが…