Révision Du Livre

平和を愛する男がチョイスするブックガイド

「ソロモンの偽証 第2部『決意』」

賽は投げられた。裁判の体制も決まり、真相究明に向けて走り始める両陣営。 そして、その過程で明らかになった意外な真相…

「テレビ局記者」の執拗な追求がきっかけだったとはいえ、ついに「裁判」をすることを決意したヒロインだが、現実は厳しかった。 一連の疑惑に対し憤りを感じつつも「受験」を理由に、非協力的な姿勢を見せる同級生達。 明確な根拠を示さず、ただただ「反対」を言い張る教員。頼みの親ですら、娘の行動を理解しようという姿勢は希薄。 ところが、開催される「卒業制作」でヒロインが「学級裁判」のことを取り上げたことに学年主任が激怒、口論のあげくにヒロインを殴打する、という事件が発生したことで、一気に流れが変わった。娘が教員から体罰を受けたという非常事態に、親が抗議のために学校当局に談判したのである。その結果「学級裁判」実現の流れが一気にすすんでいく。 ヒロインは当初「容疑者」の弁護人を務めるつもりで計画を進めていた。ところが思わぬところから横やりが入り、彼女は「弁護士」から「検察」へと役割の変更を余儀なくされる。被告の人権を守るためにも、弁護人抜きの裁判はありえない。だが「札付きのワル」としてその名を校内に轟かしていた被告人を弁護しようという、奇特な生徒が校内にいるはずがなかった。ところが被害者の小学校時代、同じ塾に通っていたという私立中学に通う生徒が、弁護士役を引き受けてくれることになった。ミステリアスな雰囲気を漂わせるこの生徒、ただ者じゃないなと思っていたら、壮絶な過去を抱えていた。そのことを知っているのは遺体の第一発見者だけである。裁判は陪審員制度を導入した形式で行われることになり、検察側・弁護士側を手助けする事務官・陪審員候補者・判事・廷吏役の生徒も校内のツテや立候補で決まり、検察・弁護側双方は、真相究明に向けて動き出す。 裁判進行上重要な証拠を集めるにあたり、検察・弁護士双方とも、周囲の大人から「被告人宅の放火事件には関わるな」と警告される。その言葉に引っかかるものを覚えながらも、真相解明のために両陣営は、ありとあらゆる手段を駆使して、証拠固めに走り回る。そしてその過程で、両陣営は被告人たく放火事件にまつわる、ある疑惑を知ることとなる。弁護士側は、被告人で働いていた元ヘルパーから。検察側は、被告人の仲間の家族の証言から…。そして真相究明の動きの中で、被告人一家の闇の部分が明らかになっていく。 一般に問題行動を起こす生徒は、抱えているケースが多いが、被告人が粗暴な行動をとるのも、家庭に問題があるからだということが判明する。 被告人の父親は、子どもに高価なブランド服を着させるなど、対外的には我が子をかわいがっているように見えるが、その一方で妻と子どもに、恒常的に暴力を振るっていた。「裁判」に関する打ち合わせ当日も、被告人は約束の時間から遅れ、顔を腫らして登場した。彼を殴ったのは、父親である可能性が高い。 また被告人の自宅は原因不明の火事で全焼、その火事で被告人の祖母が犠牲になっているが、これについてもある疑惑が浮上した。被告人の自宅は老巧化していたが、祖母はこの家に愛着を持っていた。父親はぼろ屋を解体して立て直したかったのだが、祖母はそれに反対していた。祖母が深夜徘徊を繰り返したのに、その世話はヘルパーに丸投げにしていたのは、家屋敷の名義が母親だったため、勝手に処分できなかった息子がとった嫌がらせとしか思えない。おまけに母親は完全な認知症ではなく、いわゆる「まだらボケ」で意識がはっきりすることもあったことも、息子のいらだちを増大させた。ついに息子は、己の野望を果たすためにとんでもない手段に打って出る。それはバブル期、日本全国で頻発したことだが、ネタバレになるのでここでは触れない。ただいえることは、俗に言う「バブル時代」がなければ、もっと違った結果になっていたはずである。家族関係も何もかも。 被告人の父親は地域の鼻つまみ者だったが、商売上のつきあいからなのか、闇世界との深い関係が示唆されている。警察もかなり前から、彼らのことを捜査していたようで、父親もヒロインにそれとなくほのめかしている。弁護士側も、被告人の父が経営する会社の経営実態について、父親の弁護士(こちらは、本物の弁護士である)からヒントをもらう。筆者は放火事件についてヘルパーが語った時、そのあまりの生々しさに「本当は彼女が真犯人では?」と思ってしまった。だが父親は、自分の会社の経営実態について、息子にも妻にも明かしていないどころか、来客した相手の詮索も嫌がっていたようだ。自分の父親が、どんな仕事をしているのかを知りたがらない子どもはいない。だが子どもにすら明かしていないところを見ると、相当あくどい商売をやっているどころか、何らかの理由で闇勢力とのつきあいを深めざるを得なくなったようだ。その理由は、これから明らかになるのだろうか?さらに「告発状」に関わった元担任と、告発状の犯人と名指しされた生徒の運命とは? それらの事実が一本の線でつながった時、本件の真相は明らかになる…