Révision Du Livre

平和を愛する男がチョイスするブックガイド

「2016年5月の読書リスト」

今年も6月がやってきた。今週、気象庁は九州から東海地方が梅雨に入ったことを告げた。既に沖縄は梅雨に入っているが、震災の後遺症から未だに立ち直れない熊本県民にとっては、この上なく鬱陶しい梅雨になることは確実だ。全ての被災者が、仮設住宅には入れるのはいつになるのだろうか。自分の住んでいるところが、あれだけの大規模震災に見舞われたらと思うとゾッとする。 話は変わるが、自宅にBSを入れてみた。ただでさえカツカツな生活なのに、お前は何を考えているのかと当初は文句を言っていた母だが、自分の好きな韓国ドラマを見放題と知ったとたん態度が変わり、今では夢中になってテレビを見ている。 確かに、BSの世界は面白い。だがこの世界は、私みたいな「経済弱者」には実につらい。面白そうな番組は、それなりの視聴料(2,000円~税抜/月)を払わないと、見ることができないチャンネルが多いからだ。また提供されるチューナーも、USBケーブルで接続できるレコーダーがないと、全くの役立たずである。録画して再生するとき、レコーダーが古いと、画面がハイビジョン(以下HV)幅にならない(いわゆる「標準画質」)。最近はチューナーの性能がアップしたので、旧式レコーダーでもHVで再生できる。だが画面幅がHVになるだけで、画質が向上するわけではない。テレビの画面設定を調整するだけでは限界がある。本来の画質を堪能するためには、外付けでもいいからハードディスク(以下HDD)を買わないといけない。 つい先日、私はお金を貯めて外付けHDDを購入し、付属のUSBケーブルをチューナーに接続して番組を録画・再生したところ、現在使っているレコーダーで再現される画質とは比べものにならないほどきれいな画面だった。さすが最新鋭のHDはすごいな…と思っていたら、購入してたった一週間で、HDDの調子がおかしくなってしまったではないか!再起動を繰り返し、チューナーの接続をし直しても、いっこうに不調から立ち直る気配がない。 原因として考えられるのは、室温・湿気(この二つは。PC及びその関連部品の大敵である)が前日より上昇したため、基板内の温度が高くなって働きが悪くなったこと、長時間(といっても数分~長くても2時間ほど)複数番組を同時に録画していたこと、録画しながら録画済みの番組を再生していたことだろうか。それ以外に思い当たる理由がなく、もちろん乱雑に扱ったことはない。前日までサクサクと動いていたので、誰かが細工した可能性もない。まさか工場から出荷~店舗に搬送される途中で落下した製品が、そのまま私の手元に来たのだろうか?疑えばきりがないが、はやく元に戻ってもらいたい。これ以上の出費は勘弁して欲しい… …と思っていたのだが、夜になって、気温が低くなったからか、それとも冷房が効いてきたのか、やっとHDDの調子が戻った。だが本日録画したドラマ・映画は画像が乱れたまま録画されたため、泣く泣く消去することになった。その中には、いつ放送するのかわからない作品もあるから、心理的ダメージは大きい。「夏バテ」する機械なんて、人間みたい…なんて、冗談じゃない。その後も、同時録画していた映画が、途中で録画できなくなったりとトラブル続き。その後も、HDから異音が出る度に心臓が痛くなったりだったが、とうとう我慢の限界がやってきた。見たいアニメが同じ時間帯に放送されるので録画設定したところ、再生された番組は二つとも短時間しか録画されなかったのだ。結局購入店に相談の上、新品と交換してもらうことに。その後Webを見たら、製造元のサポートセンターについての不満が出るわ出るわ…あああ、早くお金を貯めて、本機レコーダーを買わないと。

さて、先月読んだ本の紹介。 コミックが多かったのは、膝を痛めて毎日のように通院しており、通院先に置いてある作品を読む時間があったからだ。

 

ひらいたトランプ

アガサ・クリスティが1936年に発表した、名探偵「エルキュール・ポアロ」シリーズの一つである。クリスティ作品の登場人物が多数出てくるほか、舞台装置にブリッジ(正式には「コントラクトブリッジ、以下ブリッジと明記」)カード(=トランプ)ゲームの一種)が登場するのが特徴である。だがブリッジというゲーム自体、ルールを含めて日本ではよく知られていないため、欧米に比べて日本での評価が低い作品になっている。1976年に文庫本が刊行され、2003年に同じ訳者による改訳本が刊行された。私が紹介するのは前者であり(こちらは絶版)、カバーデザインは真鍋博が担当している。 ブリッジ・パーティーの主宰者が、何者かに殺された。容疑者として浮かんだのは、一癖も二癖もあるものばかり。彼はお得意の会話を駆使して容疑者を追い詰めていくが、終盤の展開は二転三転する。こいつが真犯人なのか?と思ったら別の人間が容疑者として浮上し、そして消えていく…という物語の進行をどう評価するか?問題解決の手段もブリッジに関する知識を用いているため、このゲームに関する知識がない読者には楽しめないだろう。簡単に言えば「人を選ぶ作品」であるということだ。

ダカーポ特別編集 戦後70周年を考える。

本誌を発行するマガジンハウスはバブル景気(1986~89年)時代「流行を作り出す出版社」と世間から一目置かれた出版社である。この会社が発行する「ダカーポ」は、サブカルやトレンド紹介で一世を風靡した雑誌だ。同誌編集部が編集に関わったムック本らしく、芸能や世相に関する記事が充実している。特にバブル時代を知る世代にとっては、家電や雑誌及び映画の記事を見て「ああ懐かしい。昔はこんなことがあったんだよな」と振り返り、懐かしく思うだろう。20世紀に大ヒットしたり話題になった映画・アイドル・書籍が多かったのは、テレビ・出版社の勢いがもっとも盛んな時代であり、それに加えて「口コミ」が機能していたからだと思うのは、私だけではあるまい。インターネットの登場は人々の生活を便利にしたが、同時に人々の好みも細分化され、大ヒットする作品が生まれるのが難しくなってしまった。出版社・テレビが、かつての勢いを取り戻す日はあるのだろうか?

ハイキュー!!(20)(21)

同世代の人間と比べて、私はマンガを読まない人間である。小さい頃から読んでいた数少ない作品も「ドラえもん」「21エモン」「忍者ハットリくん」「オバケのQ太郎」と、藤子不二雄の作品ばかり。高校時代に夢中になった作品も「ガラスの仮面」「パタリロ!」など、いわゆる「少女マンガ」ばかり。最近でこそ「進撃の巨人」「ニセコイ」「食戟のソーマ」といった作品に親しみを感じるようになったとはいえ、もともと私は「少年マンガ」自体が大嫌い。その中でも、いわゆる「スポ根」といわれるジャンルの作品に関心がない(どころか、嫌悪感すら抱いている)私が、この作品を紹介するのは、定期的に通院している医院に置いてあるマンガの中で、たまたま手に取った作品だから。私には面白かったが、昔ながらの「スポ根」「少年マンガ」を愛好する人にとっては、この作品はあまり評判がよろしくないようだ。 本作品は、高校バレーを扱った物語である。作者はバレーボール経験者なので、選手の心理や試合中の駆け引きが細かく描かれているのが特徴だ。本作第20巻・第21巻で描かれる内容は、「春高バレー」(正式名称は「全日本バレーボール高等学校選手権大会)の宮城県代表を賭けての壮絶な闘いであり、最終第5セットだけで2冊を使っている。先制して逆転され、突き放されても食らいつき、その後は追いつ追われつの壮烈な試合展開に、ページをめくる手には汗が浮かぶ。バレーボールは、味方は3球以内に相手陣内にボールを打ち返さなければならない。コンマ数秒、10㎝どころかミリ単位の位置取り、複雑なフェイント、サインプレー、そして呼吸。それらのタイミングが少しでもずれると、致命的な結果につながる恐怖と重圧。テレビでは一瞬で終わってしまうことでも、コート上にいる選手にとっては、とてつもなく長く感じるのだ。そして、やってくる決着の時。この試合結果がどうなったかは、あえて記すまい。だがこの試合を通じて、勝者敗者関係なく、選手たちが得たものは大きいはず。さあ次は全国大会だ!この作品はこれまで2回アニメ化されているが、宮城県大会決勝の様子は、10月からアニメ化されることになった。今年はオリンピックがあるから、バレーボールの試合がある度に、このアニメで書かれていた選手の心理状態を察することもありかも知れない。

まさに世界の終わり/忘却の前の最後の後悔

1995年、38歳の若さでAIDS(後天性免疫不全症候群)に斃れたフランスの劇作家・演出家ジャン=リュック・ラガルス(1957年~95年)が遺した2本の戯曲を収録した一冊。その作風は一見難解だが、読み込めば読み込むほど、人間心理の機微に触れた展開に夢中になっていくだろう。「まさに世界の終わり」は、不治の病で余命幾ばくもない主人公の話だが、そこで繰り広げられる対話は、何について語られているの最後まで明かされないから、観衆や読者は混乱に陥るだろう。「忘却の前の最後の後悔」は、ただ同然で手に入れた家の売却を巡る3人の男女の話。だが登場人物の過去は最後まで明かされない。そのため、観衆は「彼らは何が言いたいのか」さっぱりわからないまま、彼らのやりとりに延々と付き合わされることになる。どちらの作品にも、戯曲につきものの「ト書き」というのがほとんどないため、読者は舞台を、自分で想像しなければならない。だからこの作品は「人を選ぶ」だといえる。

赤髪の白雪姫(14)

昨年夏(7~9月)と今年冬(1~3月)に、分割2クール形式で放映されたアニメの原作。原作は少女マンガだが、ヒロインの前向きに生きようという姿勢に、共感する視聴者も多かったのではないだろうか。アニメでは、生まれつき珍しい「赤髪」を持つために祖国の王子に愛妾にされかけ、彼の「魔の手」から逃れるために隣国に逃げたヒロインが、隣国の王子の処遇を得て宮廷付きの薬剤師になり、彼と静かに愛をはぐくんでいく過程が描かれた。 今巻では、王宮を離れた白雪が、薬の調合に大苦戦するというお話。カギを握る科学者は貴族らしいのだが、彼とのコンタクトがなかなかうまくいかず、途方に暮れる白雪たち。どうしてもその科学者に会いたい白雪たちは、ゼン王子に、彼を夜会に招待してくれと依頼する。果たして、お目当ての人物は夜会に姿を現すのか? 個人的に今巻の注目ポイントは、オビが出した手紙を巡っての、ゼン王子、ミツヒデ、木々のやりとりと表情。ミツヒデは出先で、木々と同室を余儀なくされる事態があったらしい。その件について愚痴るミツヒデに向けられる木々の表情に気がつき、冷や汗を流すミツヒデ。口にこそ出さないが、宮中に出入りするようになって以来、木々はずっとミツヒデに思いを寄せ続けている。彼女は表情で「いい加減、私の思いに気づいてよ!」と思っている。ミツヒデ唐変木ぶりは筋金入りだなあ。この二人にいったいなにがあったのかは、同じ巻に収録されいている話で明らかにされます。

資本主義がわかる本棚

大ベストセラーになった「資本主義の終焉と歴史の危機」の著者である水野和夫日本大学教授が、朝日新聞日本経済新聞に寄稿した書評と小論をまとめた一冊。重厚かつ読み応えのある本が並んでおり、できることなら、この本で紹介され本を全部読破したいと思ってはいる。しかし、この本で紹介されている本は、一般向けとは思えないほど難易も値段も高い本が多く、一般人にはおいそれと手が出せないのが現状である。「資本主義は立ちゆかなくなる」と思うのならば、もう少し一般人向けに書かれた、安価で易しい本を紹介して欲しいなと思うのは私だけではあるまい。本書で紹介された本の中には、大学の授業で教科書として指定されている本も少なくないだろうが、1冊3,000円以上もする教科書を入手するのに、四苦八苦する学生の懐事情を、大学教員たちは慮ったことがあるのだろうか?メディアでは貧困問題や格差是正を訴えながら、自分の授業では、平然と高い学術本を教科書に使う著名教授。彼らの授業を受講する学生は「メディアではかっこいいこといっているのに、自分たちだって格差拡大に手を貸しているではないかと、冷ややかな眼差しを向けているに違いない。「『反安倍集会』を大学で開催しても、学生が参加してくれない」と彼らはこぼすが、その理由は自分たちにあるのだということを、よくかみしめてほしいものである。