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Révision Du Livre

平和を愛する男がチョイスするブックガイド

「2016年6月の読書リスト」

早いもので、今年も半年が過ぎた。今年(2016年)は参議院選挙がある。今回の選挙でどんな結果になるのか、正直言って怖い。皆様ご存じの通り、与党は今回の選挙で全議席の2/3を占めることを目標にしている。そうすれば、安倍政権の悲願である「憲法改正」の実現に一歩近づくことになる。 だが、有権者は本当に自民党を勝たせてしまうのか?そのカギを握っているのは、1人区の情勢である。前回の参院選で、与党勢力は29勝と圧倒した。しかしその原因は、野党系候補が乱立して共倒れになったからで、与党系候補の得票率は半分に満たない。前回の参議院選挙では、野党系候補の得票率が与党を上回ったところも多かった.そのため心ある多くの有権者は「なぜ野党は大同団結できないのか?」と怒りの声を上げた。野党各党が候補者を絞り、票割りをうまく配分していたら、結果は違っていたと指摘する識者も多い。彼らも前回の苦い教訓を生かす姿勢はあるようで、今回の選挙では野党(民進・共産・社民・生活)合同の統一候補を立てて、これに対抗しようとしている。今回やっと有権者の要求が通ったが、中心野党の民進党内部では、この期に及んで「共産党との共闘はイヤだ」などとガタガタ言っている。自民党に不満を持つ保守層が増えているにもかかわらず「共産党と組めば、彼ら保守層が逃げる」という議員がいるのだ。この党の「政治センス」のなさは今に始まったことではないが、この体たらくを見ると、政治に絶望を感じる人たちが増えるのも当然だろう。 今回の選挙から、選挙権が18歳からに引き下げられる。おそらく安倍政権は「若者の保守化」を見越し、今だったら選挙で勝てると思ったのだろう。昨年の安保法制反対で名前を売ったSEALDsは確かにがんばっているが、彼らに続こうという若者の動きが見られない。元外務官僚の孫崎享氏は「日刊ゲンダイ」のコラムで、自民党を支持すると回答した東大新入生が3割、安全保障法制の成立を「評価する」「どちらかといえば評価する」と回答した学生が4割を超えたことについて、強いものに取り入ることしか考えていないと嘆いていた。しかしそんな年寄り世代の諫言も、若者の耳には届かない。自分たちと同じ世代、同じ階層としか交流を持たないのが、今の若者である。だから、私は期待していない。21世紀の15年間で、日本は怖ろしく醜い国になってしまった。これから日本はどうなるのだろう?考えるだけで怖ろしくなる。 それでは、先月読んだ本の紹介である。

 

超・反知性主義入門

地球を「売り物」にする人たち

「地球の気温が上昇している(=地球温暖化)のは、人間の野放図な欲望と豪奢な生活を支えるために、ありとあらゆる資源を浪費しているからだ」という声が世界各地で高まっているというのに、欲深な人間というのは、なんと罪深いのだろう。さんざん資源を浪費してきた階層が「地球温暖化」を新たなビジネスモデルにするというのは、もはやブラックジョークとしかいいようがない。「多国籍企業」という名の強欲な連中の次のターゲットは、分厚い氷のために資源開発が遅れていたアイスランド。住民は欲深な多国籍企業の掌中で踊らされ、自分たちがもっている資源は、そっくりそのまま自分たちのものになると本気で思っている。そして海面上昇のために国土消滅に怯える島々には、オランダの企業がアプローチする。オランダという国家は、堤防をつくって中の海水を排出することで、耕地面積を拡大してきた。そのノウハウを、バヌアツなど国土消滅の危機に怯える国家に提供しようという魂胆だが、人の弱みにつけ込むようないやな感じしかないのは私だけか。一番の驚きは、グリーンランドを巡ってカナダとデンマークとの間に国境紛争が起きていること。もちろんそこには、まだ地下に眠っている資源問題がある。両国で共同開発をして、利益を分け合うという発想は、彼らにはないのだろうか?

BISビブリオバトル部1 翼を持つ少女

中高一貫校「美心国際学園」のビブリオバトル部を舞台にした学園小説。近年「ビブリオバトル」という単語を聞く機会が増えたが、いったいなにをするのかを理解している人は少ないだろう。自分が好きな本の魅力をわずかな持ち時間で聴衆の前に発表し、それなりの評価を得るというのは難しいものだ。本作に登場するSFオタクのヒロインとノンフィクション大好きの主人公は、おそらく作者の分身である。物語はこの二人の視点で話が進んでいくが、時間の経過とともに二人の中が急速に進展し、かけがえのない「同士」になっていく過程が、鮮やかな筆捌きで表現されている。この本で明示される筆者の思想に、あからさまな反発を露わにする読者は数多い。だがそれは、昨今の世相について、筆者が抱いている危機感の表れである。本作に出てくる登場人物は、帰化外国人(昨今では「新日本人」というらしい)や外国人とのダブル(ハーフ)の生徒など、個性豊かである。それは「みんな違って、みんないい」社会を、作者が願っているからではないか。

タックス・ヘイブンー逃げていく税金

大蔵省=財務省で主税局主計官、東京税関長を務め、財務省退官後は政府税調メンバーとして国際税制の世界に関わるかたわら、弁護士として企業の国際会計を支え来た人物の著書。筆者は官僚として大蔵省・財務省として在籍した期間のほとんどを、国際税制の世界で過ごしてきた。彼が紹介する世界は、あの手この手を使って節税を逃れようとする資本家及びグローバル企業と、それを阻止しようとする税務当局の暗闘である。しかも資本家・グローバル企業サイドには、本来なら脱税を取り締まる側にあるべき徴税機関が、資本家サイドに与しているという、驚愕の事実が明らかにされる。タイトルにある「タックス・ヘイブン」の起源は、もともと王族の資産を管理するためのものであり、その秘密を守るためには、諜報機関がしゃしゃり出るのは日常茶飯事なのだ。そのため筆者は、相手の理不尽な言い分に煮え湯を飲まされることを何度も経験してきた。彼の筆致からは、そのことについての憤りがひしひしとかじられる。だがそれ以上に無念なのは、筆者が昨年末に病のために昇天したことである。「パナマ文書」が国際ジャーナリスト集団によって暴露されたが、日本ではいつの間にか話題にすら上らなくなった。筆者が生きていたら、この事態をどう解説したのだろうかと思うと、無念でならない。

反・知性主義入門

ネット上でおなじみのコラムニストによる社会風刺論集。この手の本にありがちだが、どんどんよどんでいく世相に対する皮肉は言えても、「では、どうしたらいいのか?」という建設的な視点が、この本にはほぼ皆無に等しい。筆者の立ち位置は「左派リベラル」といったところだが、個人が持っている不満を筆にぶつけても世界は変わらない。世相はどんどん筆者のいうところである「露悪化」の道を辿っているのに、良心的な市民はどのように立ち向かえばいいのかという視点が見られないのは、筆者に限らず「リベラル派」の人たちに多いのはどうしてだろう。本書の一番の目玉は、ベストセラー「反知性主義 アメリカが生んだ『熱病』の正体」の著者である森本あんり(この人は「男性」なのでお間違えないよう)との対談。「日本では『憲法』が、宗教の代わりになっている」という、二人の視点は実に興味深い。そして本書の中で、筆者の意外な過去が明らかになるのだが、それは読んでのお楽しみということで。

ハイキュー!!(1)(2)

先月号でも紹介したが、高校バレーボールを題材にした少年漫画である。この2冊では、バレーボールの予選で知り合った二人が同じ高校に入学し、全国大会を目指す同士としての絆を深める過程が描かれている。 中学バレーボールの県内予選で知り合った、日向翔陽と影山飛雄だが、その環境はあまりにも対照的。たまたまテレビで見たばれたバレーボールの試合に出ていた「小さな巨人」に憧れてバレーボールをはじめた日向。しかし彼はあがり症で実力を発揮できない上、バレーボール部は知り合いに臨時で部員になってもらってもらうほどの弱小。対する影山は素質を認められているが、味方から「王様」といわれるほどの独善的な性格。彼はその性格が災いし、決勝戦で屈辱的な扱いを受ける。そんな二人が、高校でチームメートになる。最初は喧嘩ばかりしていた二人だが、影山は日向の素質を見抜く。日向もまた、影山の期待に応えようと奮闘する。そしてある日、チームに練習試合の話が持ち上がる。チームワークが重要なスポーツ、それがバレーボールである。二人は今後、コンビネーションをどうやって磨いていくのだろうか。